相続税借地権割合とは
相続税借地権割合は借地権及び底地に相続税を課税するためのもので、当事務所がある倉敷市では30%から50%まで10%刻みで設定されている。しかしながら、この割合がなにか根拠あるものから設定されているかというと、実はそうではない。
そもそも借地権が実体的に財産価値をもって市場で流通しているのは全国のうち東京及び横浜の一部だけといわれている。これらの地域では、大正時代以降から戦後の一時だけであるが、借地開始にあたって権利金の授受があった。その権利金の価格が更地価格に対して何割という形で定められ(これを上土権という)、そしてそのように設定された借地権も市場で流通性を持つようになった。大正時代にはじめて相続財産として借地権も課税されるようになったが、課税されたのは東京だけであった。
戦後において、権利金の更地価格に対する割合をベースに税務当局で借地権割合が設定されたが、当初は東京都および横浜市の区域だけで設定され、課税もその地域だけであった。権利金授受の慣行が東京・横浜にしかなかったからである。その後借地権割合の設定及び借地権課税は昭和24年から全国で行われるようになった(当初は道府県庁所在地及びこれに準ずる都市だけだったが、その後全国で行われるようになった)。課税対象は借地権というより、借地契約により財産価値が減少した底地であったといわれている(底地に対して、借地権割合を控除した底地割合でもって課税した)。
しかし、権利金授受の慣行は東京、横浜以外には広まらなかったので、借地権割合の設定にあたっては土地価格の高低によりランク付けをしたのが実態であった(東京では土地価格の高い地域での借地権割合、つまり権利金の割合が高かったため、東京以外の地方においてもそうであろうと類推されたものである)。
以上のように、東京、横浜以外の全国の地域では、権利金授受の慣行はなく、したがって税務当局によって設定された借地権割合は単に土地価格に対してランク付けされたものでしかなかったのが実態であった。しかしながら、その後この借地権割合は一人歩きを始めるようになる。借地権が市場で流通する、つまり、借地権を第三者が購入するということはなかったが、借地当事者間で借地権の解消(つまり地主が建物付きで借地権を買い入れる)の際、あるいは借地人が底地を買い入れる際の価格が、この相続税借地権割合でもって行われるようになったのである。ほかに拠るべきものがなかったためと思われるが、この根拠の無い割合が実体を持つようになっていったのである。現在では、相続税借地権割合は借地権あるいは底地の売買の場合において十分な市民権を持っているといえる。
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